日本の昔と今とこれからをクラフトビールを通して再発見する「JAPANESE BEER ODYSSEY」。日本文化を縦横無尽に醸す旅の先でどんなクラフトビールと出会うのか…ここJBO GUIDEでは、オトモニオリジナル銘柄のテーマとなった文化をより深く掘り下げてご紹介していきたいと思います。

【こよいお月見】雅な平安、フェスな江戸。チルな令和へ繋ぐお月見のあれこれ

JAPANESE BEER ODYSSEY第13弾の銘柄は「こよいお月見」。
今の暮らしの溶け合うお月見の楽しみ方を提案する「OTSUKIMI.」さんとのコラボで造り上げた、鳥取で一番おいしい梨をふんだんに使用した和梨のウィートエールです。

提供 : OTSUKIMI.

「お月見」それは古くから続く伝統行事。秋の澄んだ夜空に浮かぶ美しい月を愛でつつ、秋の収穫に感謝する文化です。現在はしっとりとしたイメージのあるお月見ですが、時代によってその姿は異なり、時には夜通し遊ぶ人気の行事だったことも……!今回は身近なようであまり知らない、お月見の昔と今をご紹介していきたいと思います。

雅を楽しむ平安時代・遊び騒ぐ江戸時代

お月見はもともと中国の「中秋節」という収穫祭が起源と言われています。中秋の名月を愛でる文化が唐から伝わり、宮廷や貴族たちの間で広まっていったのです。平安時代のお月見は月を愛で、和歌や管弦、お酒を楽しむというもの。月明かりの下、風雅な宴が行われていたのです。

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それが大きく変化したのは江戸時代後期。「月を愛でる」という文化に、日本古来から伝わる「月に作物の収穫を感謝する」という文化が融合し、現代につながる文化になりました。お月見団子をお供えするようになったのもこの時代。収穫した野菜や、稲穂に見立てたススキを飾り、月を鑑賞しながら、作物の収穫に感謝したのです。

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そしてお月見は庶民を中心に花開き、より大衆へと広がっていきました。日が沈むと暗闇に包まれていた江戸時代、月の光はいまよりも煌々と輝いていました。お月見の日は、そんな月明かりの下、夜中まで、いや朝まで遊び騒げる日として楽しまれていたのです。川に船を浮かべたり、水面に写った月を眺めながら酒を飲んだり……その様子は江戸時代のフェスのようなものでした。

お月見でチルな時間を 暮らしに溶け込むお月見

このように大盛り上がりだったお月見ですが、いつの間にかその影は薄くなり、現在では「十五夜っていつだっけ?」「お月見って何をするんだっけ?」と少し寂しい状況になってしまっています。

そんなお月見文化を、再び盛り上げようと活動している人々がいます。彼らの名前は「OTSUKIMI.」。イベントやコンテストなどを通し、今の暮らしにあった「新しいお月見」の形を提案してくれているのです。

提供 : OTSUKIMI.

現代にマッチしたお月見とは一体どのようなものなのか、そしてなぜ今お月見なのか……気になるあれこれを「OTSUKIMI.」代表の渥美まいこさん(以下渥美さん)にお伺いしました。

――最初に「OTSUKIMI.」が発足したきっかけを教えてください

渥美さん:2020年にコロナ禍になり、様々なイベントが中止になりました。「あぁ、これからは集まることは難しいのだな……」そう思っていた時、子どもが読んでいたお月見の本が目に入ったんです。直接集まらなくても、月という対象物を見ながら盛り上がることができるお月見という文化。そんな文化があったことを思い出し、Twitterで呟いたところ、今の「OTSUKIMI.」メンバーたちが「お月見っていいよね!」と反応してくれたんです。そこから話が進み、「OTSUKIMI.」はスタートしました。

初めてみて気づいたことは、月を嫌いな人はいないということ。月が好きな方も多いので、いろいろなメーカーさんがコンテストに協賛してくださいました。今年で3年目ですが、取り組みを理解してくれる方が増え、「お月見が身近になった」などと嬉しいお声もいただいております。

提供 : OTSUKIMI.

――お月見はみんな知っているものの、現代においてはあまり馴染みのない文化。そんなお月見の復活が今始まっているのですね!

渥美さん:ちなみに中国をはじめ、東アジアの国々では今もお月見は盛り上がっているんですよ!中国では春節と同じような一大イベント。月餅を交換しあう文化があるため、そこをめがけてティファニーやスターバックスがオリジナル月餅を発売したりしています。ちなみに台湾は独自の文化に進化していて、お月見の日は焼肉の日になっています。

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――お月見に焼肉?!どういうことですか?

渥美さん:台湾の調味料メーカーが「十五夜の日には焼肉を食べよう!」というプロモーションを仕掛け、それが成功したんです。おもしろいですよね。

――「OTSUKIMI.」さんは「今の暮らしの溶け合うお月見の楽しみ方」をご提案されていますが、具体的にどのようなことなのでしょうか?

渥美さん:例えば三方 (お月見団子を乗せる台)があるおうちは少ないと思うので、それをわざわざ買うのではなく、家にある無印良品やIKEAのお皿で代用する。お月見だから窓辺で食事をしたり、ベランダで乾杯したりする。そんな感じで無理をせずに、今の暮らしの延長線でお月見を楽しんでいただければなと思っています。

提供 : OTSUKIMI.

お月見ってすごくチルな時間だと思うんですね。お酒やちょっとしたおつまみを片手に、ぼーっと月を見上げる。そうすると日常がちょっと特別な時間になるんです。キャンプのように外に出かけなくても、日常の延長線上で自然を感じることができる。お月見はそんな外と家の中の間にある存在だと思っています。

提供 : OTSUKIMI.

――忙しいわたしたちにとって、お月見はいま必要な行為なのかもしれませんね。

渥美さん:そうですね。月を見上げるって行動はいまの現代人にとって「あるといいもの」だと思っています。ずっとパソコンに向かい合っていて、ふと外に出た瞬間、大きな月が見える。そうすると疲れがふわあっと取れる気がしますよね。月は気持ちを緩めて、リラックスさせてくれる存在。なのでお月見以外でも、毎月の満月に月を楽しんでもらえれたらなと思っています。

でもいきなり「月を楽しみましょう!」と言われても、多くの人は「どうすればいいんだ?!」と困ってしまうはず。なのでお月見をとっかかりに、月を見ながらするチルなことを見つけていただければなと思います。

現代だからこそのお月見の楽しみ方

――わたしはやっぱり月を見ながらビールを飲みたいですねえ。月見酒……想像するだけで幸せな気持ちになります。

渥美さん:月を見上げることで、とても豊かな気持ちになれると思いますよ。お月見は世代や、性別関係なく楽しむことができる文化。ライフステージに応じて様々な楽しみ方ができるのが魅力ですよね。

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そしてこれは現代だからこそですが、同じ月をみながらSNSでゆるくつながることができるのもおもしろいと思います。Twitterで同じハッシュタグで「月が素敵だよね」と共感することができれば、どんなに離れていても一緒にお月見している気持ちになれます。インターネットが普及したいまこそ、お月見が本領を発揮する時代なのかもしれませんね。

――確かに……美しい月を見ながら、遠く離れた人々と同じ話題で盛り上がることができるのは素敵なことですね!

渥美さん:そうですよね!それに加え、「収穫への感謝」の意味も持つお月見は、食べ物について考えるいい機会にもなると思います。いまはスーパーに行けば野菜はあって当たり前の時代。生産者さんとの距離が離れてしまっていますが、お月見という行為を通じ、作物について考え、向き合うタイミングになればいいなと思っています

JBO銘柄第13弾はお月見をテーマにしたビール「こよいお月見」

「OTSUKIMI.」さんによる新しいお月見は、いまがまさにスタート地点。今後どんどん文化として確立されていくのだと思います。新たな文化が生まれる瞬間を目撃してしているのかもしれない……と思うととてもわくわくしますね。

そんな「OTSUKIMI.」さんと一緒に、お月見をテーマにしたビール「こよいお月見」を醸造しました。月のようにまんまるな、和梨を使ったウィートエールです。鳥取で一番おいしい梨をふんだんに使用し、梨の甘み感じる味わいに仕上げています。

こよいお月見

お月見は、豊作を祈る十五夜(旧暦の8月15日)に収穫に感謝する十三夜(旧暦9月13日)の2回。今年の十五夜は9月10日で、十三夜は10月8日になります。

ビールのお届けは、10月1日予定。今年の十三夜は同じ月を見上げながら、同じビールで乾杯しましょう!

SNSに投稿する際には、ぜひ「OTSUKIMI.」さんの考えたキャッチフレーズ、「#こよいお月見」というハッシュタグをつけてくださいね。日本各地にいらっしゃる皆さんと、このハッシュタグで繋がることができるのを楽しみにしています。

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文 : ルッぱらかなえ(小林加苗)
取材協力 : OTSUKIMI.

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