【令和梅齧り麦酒】旬は一瞬。手もぎで丁寧に。カリカリ梅作りの熱きこだわりに迫る

JAPANESE BEER ODYSSEY第8弾の銘柄は「令和梅齧り麦酒」。世界にはライムやレモンを齧りながら飲むお酒がありますが、それを日本にローカライズするとどんなものになるだろう……そんな着想から生まれたこのビール。日本で酸味があるものといえば、やはり梅!ということで梅を齧りながら楽しんでいただくクラフトビールを造りました。

日本の昔と今とこれからをクラフトビールを通して再発見する「JAPANESE BEER ODYSSEY」。日本文化を縦横無尽に醸す旅の先でどんなクラフトビールと出会うのか…ここJBO GUIDEでは、オトモニオリジナル銘柄のテーマとなった文化をより深く掘り下げてご紹介していきたいと思います。

日本文化に深く根付く梅

梅は古くから日本人に愛され続けており、日本の伝統文化においても梅をテーマにした作品は多く作られてきました。着物や陶器、そして家紋などにモチーフとして描かれたり、歌として詠まれたり。元号「令和」の由来となった万葉集の歌も、梅の美しさや開花の喜びを表現した「梅花の歌」であり、これらのものから梅がどれだけ深く日本文化に根付いてきたかを見てとることができます。

出典 : 写真AC

早春の頃には凛と咲き誇るその姿を愛で、丸々とした実をつければ、それを加工し堪能する。奈良時代には既に梅の実を生菓子に加工して食べていたといわれており、様々な梅の加工方法が生まれていきました。

梅干し、甘露梅、梅酒梅など梅を使った食べ物は多数存在していますが、今回はその中でこれから収穫の時期を迎える青梅を使った「カリカリ梅」にフォーカスし、その昔と今を探っていきたいと思います。

提供 : 赤城フーズ

きっかけは不作による苦境だった!カリカリ梅誕生秘話

コロンとしたフォルムに、カリカリとした食感。おやつにおつまみに、ご飯のお供にとお馴染みのカリカリ梅ですが、その誕生は今から約50年前のこと。群馬にある赤城フーズが梅の不作に苦しみ、試行錯誤した結果出来上がった副産物でした。

群馬県にある赤城フーズ工場外観(提供 : 赤城フーズ)

昭和44年、群馬の梅は大不作になってしまい、梅製品を作っていた赤城フーズは窮地に立たされました。梅の漬け物を作ろうにも原材料となる梅がない。しかしお客様は製品を待っている……そこで赤城フーズは群馬や長野の山間部にある農家さんにお願いをし、彼らの自家用梅漬を集めてまわったのです。

昭和38年頃の本社(提供:赤城フーズ)

こうしてなんとかピンチを切り抜けた赤城フーズでしたが、農家さんから集めた梅漬の中に変わった食感の梅があることに気づきました。当時、梅漬といえば柔らかな梅であることが当たり前。しかしその梅はカリカリとした食感であり、さらに一年程寝かしておいても硬いままだったのです(通常梅は寝かすと柔らかくなる)。

それを試しに食べてみた赤城フーズ4代目社長松永秀雄は、カリカリとした食感や気取りがない素朴な味わいに心地よさや懐かしさを覚えました。「これは売れるかもしれない…」そう思った社長は商品化を決意。この梅漬の製法が長野の山村に伝わるものであることを突き止め、そのメカニズムに関する研究を重ね、カリカリ梅を生み出したのです。

カリカリ梅第1号商品パネル(提供:赤城フーズ)

「梅漬=柔らかい」が当たり前だった時代。カリカリ梅の登場は「漬け物業界の新風」であり、世に衝撃を与えました。その後さらにハーフドライになり、個包装されたことでカリカリ梅は大ヒット。漬け物という枠を飛び出し、おやつやおつまみとしても愛されるようになっていきました。苦境から生まれた商品は、梅の世界をぐぐっと押し広げるきっかけになったのです。

旬は一瞬!収穫に熱き想いをかける群馬の梅農家

創業約130年、カリカリ梅を作って50年以上。生みの親である赤城フーズさんは一体どのようなこだわりをもって商品を作り続けているのか。気になる梅への想いを、代表の遠山さんにお伺いしました。

代表の遠山さん(提供:赤城フーズ)

――御社ではどのような点にこだわり、カリカリ梅を作っているのでしょうか?

遠山さん:わたしたちは群馬県産を中心に、選び抜いた国産梅でカリカリ梅をつくっています。こだわりはいくつかありますが、まずは使用する梅についてお話させていただきます。カリカリ梅はカリっとした食感が命なのですが、それを出すためには梅の鮮度がとても大切になります。表面はつやつやと瑞々しく、種が白くて実が青い。同じ外見の青梅でも、少し熟して種が茶色っぽくなってきてしまえば、もうカリカリ梅には適さなくなってしまうので、とても短い「旬」の状態の青梅を収穫してもらい、漬け込んでいます。

提供:赤城フーズ

――青梅の収穫は、そんなにタイミングが限られているのですね

遠山さん:同じ青梅でも梅酒用の梅だとそこまで厳しくないのですが、食感を重要視するカリカリ梅の場合、収穫時期はとてもシビア。その梅畑で「いまが収穫時だ!」というタイミングは1週間程度で、限られた短い間にすべての青梅を収穫し終える必要があります。とにかく旬が短いので、農家さんたちは雨の日でもレインコートを着て脚立に上り、全身葉っぱだらけになりながら手もぎで梅を収穫するんです。

――梅の収穫はすべて手もぎなんですか?!

遠山さん:カリカリ梅の梅は手もぎです。梅の収穫には様々な方法がありますが、青梅は繊細で傷つきやすいため、一粒ずつ大切に収穫をする必要があるんです。

提供:赤城フーズ

また青梅は収穫した後もスピード感が必要な果実。収穫後も熟度が進んでしまうので、カリカリ感を保つため、収穫当日に漬け込みを行うようにしています。そのために、農家さんたちは朝日が昇る前から収穫を開始してくれるんですよ。

丁寧に収穫したツヤツヤの肌の青梅を、カリカリ梅のために最適なタイミングで持ってきてくれる。群馬の農家さんの青梅にかける情熱やこだわりは本当にすごいと思います。

目指すは最高の食感!一切の妥協を許さず走り続ける

――収穫された梅をその日のうちに漬け込むということは、夜から工場が稼働するということでしょうか?

遠山さん:その通りです。朝もぎ梅を夕方には工場に運び、そこから下漬けを開始。10トントラックで青梅を搬入するので、漬け込みは深夜にまで及ぶこともあります。

――それは大変ですね…

遠山さん:でもそうすることで少しでも梅の鮮度を保つことができ、お客様に喜んでいただけるので、青梅の収穫時期である5月下旬~6月上旬までは社員一丸となり、てんやわんやでがんばっています。

漬け込みタンクの様子(提供:赤城フーズ)

ちなみに漬け込み方も、開発当初から変わらぬこだわりの製法を守り続けています。カリカリ梅を作る製法は大きくわけて2種類。わたしたちの製法は手間はかかりますが、カリカリ感がより保てる製法です。

――すべてにこだわったカリカリ梅が、御社の製品なのですね!最後に読者さんへのメッセージがあればお願いいたします。

遠山さん:群馬の梅の生産量は、和歌山に続き日本で第2位。でも残念なことにその事実はあまり知られていません。これを機に、農家さんたちのこだわりや熱き想いを知っていただき、群馬の梅に興味を持っていただけたら嬉しいです。

提供:赤城フーズ

JBO銘柄第8弾はカリカリ梅を齧りながら飲むクラフトビール「令和梅齧り麦酒」

爽やかな酸味と食感で、ホッと一息ついたり、リフレッシュすることができるカリカリ梅。今回はそんな梅を齧りながら飲んでいただくクラフトビールを造りました。ビアスタイルはベルジャンホワイト。普通の山椒ではなく、カリカリ梅との相性を考え梅山椒を使用しております。

オトモニオリジナル 令和梅齧り麦酒

5月12日・26日の令和梅齧り麦酒配送回では、今回お話を聞かせてくれた赤城フーズさんのカリカリ梅を同梱させていただきます。少し疲れが出やすいこの季節。ぜひ「令和梅齧り麦酒」とカリカリ梅で気分転換してみてくださいね。

文 : ルッぱらかなえ(小林加苗)
協力 : 赤城フーズ株式会社

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